「ポンポン」と「ガチャガチャ」




 一歳半になる孫と近所を散歩した。いまだヨチヨチ歩きの孫が突然「ポンポン、ポンポン」と叫びながら、よそのお宅の玄関先に突進していく。と、そこには狸が・・・朝ドラ「スカーレット」で一躍有名になったあの信楽焼の狸である。孫はそのお腹をたたきながら、さらに「ポンポン、ポンポン」と呼び続ける。きっと保育園のお散歩で、保育士さんから「ポンポン」だよと教えてもらったのだろう。確かに、信楽の狸は子ども心をわくわくさせるもののようだ。子どもにとって、この家は「ポンポンの家」となる。

 そんな話をしていたら、妻がおもしろい話をはじめた。

 元保育士の妻が勤めていた保育園は西陣にある。住民のほとんどが「織子さん」と呼ばれる織工さんで、彼らの住まいは織屋建てと呼ばれる連棟長屋であった。彼女が保育士だったころ、例によって子どもたちと散歩をしていると、そこかしこの家々からジャガード(織機)の機音が聞こえてくる。その音に合わせて散歩の子どもたちは「ガチャガチャ、ガチャガチャ」と想い想いに口ずさんだそうだ。西陣織の衰退は著しいが、それでも数年前までは数件の家々から機音が聞こえ、こんな光景が見られたのだ。まちのあり様、くらしやなりわいの変化が、子どもたちのはじめての言葉おぼえに変化を与えるのだという。

軒先の置物、家々から聞こえてくるさまざまな音やにおい、手触りや肌で感じるまちの空気、そんな「豊かさ」にあふれるまちを子どもたちに残したい・・・。

 今は新型コロナウィルスで孫との散歩もままならない。一日も早い終息を・・・   (吉)